Facebookはいかに多言語ローカライズで世界的な成長を実現したか

Facebookが2008年に行った多言語展開は、いかに成長の基盤となったのか。出典付きのユーザーデータとともに、ウェブアプリに活かせる教訓を紹介します。

Facebookはいかに多言語ローカライズで世界的な成長を実現したか:コミュニティ翻訳のタイルが組み合わさる

2008年2月、Facebookは急成長中のプロダクト企業としては異例の行動に出ました。自社インターフェースの翻訳を、利用者自身に委ねたのです。約1,500人のユーザーが、4週間足らずでサイトをスペイン語に翻訳しました。社内のローカライズチームも翻訳会社も使わず、あったのは翻訳ツールと投票の仕組みだけでした。その1か月後には、2,000人を超えるユーザーが同じ方法でドイツ語版を完成させました。今度は2週間もかかりませんでした。

4年後、Facebookは米国証券取引委員会に対し、月間アクティブユーザー数が8億4,500万人に達し、その約80%が米国外のユーザーであると報告しました。翻訳だけで世界的なプラットフォームができたという意味ではありません。同じ時期に、モバイルの成長、Facebook Platform、ネットワーク効果も相乗的に拡大していました。ただし、早い段階から迅速に多言語対応を進めたことで、主要市場の一部では、Facebookが「英語のサイト」と見なされる状況をほぼ即座に変えることができたのです。自社のロードマップにウェブサイト翻訳を組み込むべきか検討しているなら、この進め方は研究に値します。

このガイドでわかること

  • Facebookはいつ多言語化し、最初の言語版をどのように公開したのか?
  • Facebookのコミュニティ翻訳モデルは、どのような仕組みだったのか?
  • 対応言語の拡大後、Facebookのユーザー数はどう伸びたのか?
  • 言語版の公開に伴い、Facebookのユーザーの地域構成はどう変わったのか?
  • ローカライズと市場成長の関連を示す、国別のデータには何があるのか?
  • ネットワーク型プロダクトにとって、多言語ローカライズがこれほど強力な成長の原動力となったのはなぜか?
  • 因果関係について、データから何が証明でき、何が証明できないのか?
  • 現代のウェブアプリやSaaSのチームは、Facebookの手法から何を取り入れるべきか?

要点:多言語対応は「あれば便利なもの」ではなく、成長を支える基盤だった

Facebookは2008年2月7日にスペイン語版を、2008年3月3日にドイツ語版を公開しました。いずれも、社内チームがすべての文言を手作業で翻訳するのではなく、コミュニティ翻訳を基盤としていました。2012年の新規株式公開(IPO)に向けた登録届出書で、Facebookは2011年12月31日時点の月間アクティブユーザー数を8億4,500万人、前年比39%増と報告しています。その約80%は米国外のユーザーで、インドとブラジルでは米国を大きく上回るペースでユーザー数が伸びていました。とはいえ、これらの数字は、翻訳だけが成長をもたらしたことを証明するものではありません。モバイルの普及、Facebook Platform、ネットワーク効果も同時に相乗的に拡大していたからです。記録から読み取れるのは、Facebookが多言語対応を、ほかの要因で成長した後に付け足すプロジェクトではなく、早期に提供して改善を重ねる基盤として扱っていたということです。因果関係に関する留保も含めて、見習う価値があるのはこの進め方です。

Facebookが多言語化した時期

Facebookの英語以外への展開は、時間をかけた段階的なものではありませんでした。2008年2月7日、同社はより広範な国際化計画の第一歩としてスペイン語版を発表し、ドイツ語版とフランス語版もすでに開発中であることを明らかにしました。当時、Facebookによると、ユーザーの60%以上はすでに米国外におり、ラテンアメリカとスペイン全体のアクティブユーザー数は280万人を超えていました。それまでは、この市場にも英語でサービスを提供していたのです。スペイン語を話す約1,500人のユーザーが、専用の翻訳アプリを使って4週間足らずでサイトを翻訳しました。そして2008年2月11日から、スペイン語圏からの訪問者にはスペイン語版が標準で表示されるようになりました。

その3週間半後の2008年3月3日、Facebookはドイツ語版を公開しました。今回はさらに速く、ドイツ語を話す2,000人以上のユーザーが、2週間足らずでサイトを翻訳しました。Facebookは両言語版の公開を、単発の実験ではなく、長期的な国際化プログラムの第一歩と位置づけていました。

コミュニティ翻訳がスピードを生んだ仕組み

両言語版の公開には、同じ考え方が使われていました。限られたチームが期限に追われながら何千ものインターフェース文言を翻訳するのではなく、Facebookはユーザーに翻訳アプリを公開したのです。ユーザーは画面上で個々の文言に対する訳文を投稿し、コミュニティは賛同する訳に投票しました。このシンプルな品質管理の仕組みにより、社内チームだけでは1か月足らずで到底実現できない規模の翻訳が可能になりました。

この投票の仕組みは、見た目以上に重要でした。文言によっては、直訳では適切な表現が見つからないことがあります。また、Facebook独自の機能名には、既存の動詞に新たな意味を持たせた表現が使われており、その代表が「poke」でした。スペイン語圏のユーザーは投票で「dar un toque」を選び、ドイツ語圏のユーザーは「anklopfen」に決めました。どちらも「poke」の辞書的な訳語ではありません。文脈の中でその操作が何を意味するのかを、コミュニティが判断して選んだ表現です。翻訳指示書やスタイルガイドを用意して同じ答えにたどり着くよりも、はるかに速く結論が出たと考えられます。

Facebookは、このツールを開発者エコシステムにも広げました。両言語版の公開時には、自分のアプリをFacebookユーザーに翻訳してもらいたいFacebook Platformの開発者向けに、翻訳アプリを近く提供すると発表しています。このローカライズモデルはFacebook本体だけにとどまらず、Platform全体を支える共通基盤でした。そしてPlatformは、2008年の時点ですでにFacebookの成長を語るうえで重要な存在となっていました。

成長データが示すこと、示さないこと

FacebookがIPOに先立ってSECに提出した2012年のForm S-1登録届出書には、初期の多言語展開後、数年間でユーザー基盤がどう変化したのかを示す、最も明確な公開データがあります。Facebookが報告した2011年12月31日時点の月間アクティブユーザー数は8億4,500万人で、前年比39%増でした。同期間の米国の月間アクティブユーザー数(MAU)は16%増と堅調でしたが、132%増の4,600万人に達したインドや、268%増の3,700万人に達したブラジルと比べると、伸びは緩やかでした。Facebookによると、2011年末時点で月間アクティブユーザーの約80%は米国外におり、海外市場はユーザー数の成長だけでなく、上場に向けて投資家に訴求する広告リーチにとっても中核となっていました。

この傾向を好意的に読めば、早期に現地語版が提供された市場が、もともと翻訳を必要としなかった市場よりもはるかに速く成長したという、多言語対応主導の成長シナリオに合致します。ただし慎重に見れば、これだけでは何も証明できません。S-1は言語を独立した変数として分析しているのではなく、各国の成長を集計して報告したものです。その間、同じ国々ではモバイルの普及が急速に進み、FacebookのPlatformや広告プロダクトが成熟し、各市場が一定の規模に達するとネットワーク効果も相乗的に拡大していました。2008~2012年のFacebookの成長のうち、どの程度が翻訳だけによるものかを特定した、対照条件を設けた公開研究はありません。このガイドで、そうした研究があるかのように語ることもしません。ローカライズは、すでに成長の条件が整っていた市場で、その成長を後押しし、増幅した可能性のある要因と捉えるべきです。Facebookが10億人のユーザーに到達した唯一の原因ではありません。その達成には、モバイル、Platform、広告、そして長年にわたるネットワーク効果の積み重ねが必要でした。

ローカライズがネットワーク効果を増幅した理由

言語は、一人で使うアプリよりもネットワーク型プロダクトで重要になります。ソーシャルネットワークがユーザーにもたらす価値は、周囲のどれだけ多くの人が使っているかに左右されるからです。市場の相当数の人々がインターフェースを無理なく読めないとしたら、失うのは登録者だけではありません。友人を招待する価値を生み出す、ユーザー同士のつながりの密度まで抑えてしまいます。

CSA Researchが2020年に29か国の消費者8,709人を対象に実施した調査では、76%が自分の言語で情報が提供されている商品の購入を好み、40%が他の言語のウェブサイトからは決して購入しないと回答しました。これはB2Cの購買行動であり、ソーシャルネットワークへの登録行動を調べたものではありません。しかし、その仕組みはほかにも当てはまります。言語は利用の障壁となり、すでに誰が参加しているかによって参加の判断が左右されるプロダクトでは、その障壁が悪影響を増幅させます。強い潜在需要のある市場でその障壁を取り除けば、単にユーザーを一人ずつ増やすだけでなく、言語によって抑えられていたネットワーク効果を引き出せる可能性があります。

Facebookが言語版を公開した順序も、この見方を裏づけています。スペイン語とドイツ語を選んだのは、根拠のない判断ではありませんでした。Facebookは、翻訳版の公開前からラテンアメリカとスペイン全体で280万人を超えるアクティブユーザーが英語版を利用していたと説明しています。未知の市場を推測で選んだのではなく、すでに存在が確認できていた需要に向けてローカライズしたのです。これは、需要の兆候がまったくない市場に向けて翻訳するのとは、大きく異なる判断です。

現代のウェブアプリとSaaSへの教訓

Facebookの2008年の戦略は、現在のSaaSローカライズツールが登場するより10年以上前のものです。それでも、その根底にある判断は、次の投資先を検討するウェブアプリやSaaSプロダクトに今も当てはまります。

市場規模を推測するのではなく、まず、すでにどこで使われているかを確認しましょう。Facebookがスペイン語版とドイツ語版を公開したのは、英語のインターフェースで利用するユーザーがすでに数百万人いる市場でした。自社のアクセス解析やサポートへの問い合わせを調べ、ローカライズされていなくても利用が見られる地域を探してください。それは、人口データだけよりも有力な判断材料になります。

「完全な」翻訳ができるまで待つのではなく、使えるバージョンを素早く公開し、改善を重ねましょう。Facebookのスペイン語版とドイツ語版の公開にかかったのは、数四半期ではなく数週間でした。また、完成済みのプロジェクトではなく、継続的な取り組みとして対外的に説明していました。レビュー工程では、字義どおりの正しさを確認するだけでなく、文脈に合わない訳を見つけられるようにしましょう。「poke」の事例では、辞書的に正確な訳では不適切だったため、投票の仕組みによって数日以内に適切な表現が選ばれました。

ローカライズは主力プロダクトだけでなく、エコシステムにも広げましょう。Facebookは自社インターフェースに使うだけでなく、Platformの開発者にも翻訳ツールを提供しました。API、プラグインのマーケットプレイス、パートナー連携があるなら、そこでの言語対応の不足も、自社UIの不足と同じように成長の限界になります。また、期待値を現実的に保つことも大切です。ここでのデータが示すのは、モバイル、プラットフォーム、広告の拡大と並行して、言語版の公開とその後の成長に相関があったということです。翻訳だけで成長できるという保証ではありません。社内には、ユーザー獲得・展開計画のすべてではなく、その一部として提案しましょう。

一般公開ページでは多言語SEOも重要

2008年のFacebookのローカライズは、ほぼ全面的にログイン後のプロダクト体験を対象としており、検索での見つけやすさを目的としたものではありませんでした。しかし、現代のウェブアプリやSaaSプロダクトには、マーケティングページ、ドキュメント、ブログ、公開ディレクトリ、更新履歴など、一般公開されているページがあります。そこには、ほかのウェブサイトと同じように多言語SEOの原則が当てはまります。

Googleは、Cookieやブラウザの言語検出だけに頼るのではなく、ページの言語版・地域版ごとに、クロール可能な別々のURLを使うことを推奨しています。訪問者の希望言語には、検索エンジンから見えず共有もできないクライアント側の表示切り替えではなく、リンクできる実際のURLを対応させるべきです。同じページに複数の言語版がある場合は、hreflangアノテーションでそれらの対応関係をGoogleに伝えます。指定は相互的でなければなりません。一方向だけでなく、対象となるすべてのURLから、ほかのすべてのURLを参照する必要があります。

有用なコンテンツに関するGoogleのガイダンスも、真剣に受け止める価値があります。Googleが重視するのは、ユーザーを第一に考えたページです。わずかな文言を未確認のまま機械翻訳しただけの、内容の乏しい言語版や定型文しかない言語版は、ユーザーにとっても検索にとっても不十分です。十分な品質の翻訳に必要なリソースをまだ確保できないなら、多数の言語に薄く対応するより、少数の言語で質を確保して公開するほうがよい場合が多いでしょう。Bingウェブマスターガイドラインも、同社のインデックスについて同じ原則を示しています。言語数の多さよりも、クロール可能で本当に役立つコンテンツと、わかりやすい構造が重要なのです。これらは検索順位を保証するものではありません。大部分の機能がログインなどで制限されているプロダクトの一般公開ページも含め、多言語サイト全般に対してGoogleとBingが文書で示している基本要件です。

「翻訳するだけ」で起こりがちな失敗

こうした取り組みがうまくいかない原因の多くは、翻訳品質だけの問題ではありません。Facebookが2008年に公に説明していたような継続的な基盤ではなく、ローカライズを一度きりの作業として扱ってしまうことにあります。

最もよくある失敗は、文脈を確認せずに直訳することです。「poke」の事例で回避できたのが、まさにこの落とし穴でした。投票やレビューの仕組みがなければ、プロダクト用語や慣用表現が不適切なまま公開され、そのまま残りがちです。技術面では、一般公開ページで、クロール可能な実際のURLを用意せず、クライアント側のスクリプトで言語表示だけを切り替えると、Googleのガイダンスが直接取り上げている問題に直面します。検索エンジンが実際にインデックスでき、ユーザーが共有できるのは、言語ごとに分かれたクロール可能なURLです。クライアント側だけで表示を切り替えても、同じことは実現できません。「この言語に対応している」という項目を満たすためだけに、機械翻訳のみで内容の乏しいページを公開しても、結果は変わりません。有用なコンテンツに関するGoogleのガイダンスは、ユーザー第一のページを重視しています。実質的な内容を伴わない定型文の翻訳は、検索にとっても、答えを求めている人にとっても不十分です。

技術以外にも、2つの失敗があります。1つは、プロダクトを翻訳しても、ドキュメント、サポートコンテンツ、連携機能といったエコシステムを英語のままにすることです。それでは、翻訳ツールをPlatform開発者にも広げたFacebookの取り組みを、半分しか実践していないことになります。もう1つは、翻訳だけで成長を支えられると期待することです。それは、ここで示したデータの読み違いです。言語版の公開は、モバイルの成長、プラットフォームの拡大、広告と並行して進んだのであって、それらに取って代わったわけではありません。

GlotEOが担う役割

Facebookが2008年に独自の翻訳ツールを開発したのは、急成長するウェブプロダクトがコミュニティ翻訳を素早く進めるための既製ツールが、まだ存在しなかったからです。現在、ほとんどのチームは、その基盤をゼロから構築する必要はありません。その課題を解決するために作られたのが、GlotEOのウェブサイトローカライズプラットフォームです。言語版を追加するたびに何四半期もかかる開発プロジェクトにすることなく、プロダクトの一般公開ページを翻訳し、レビューして公開できるようにします。

翻訳済みのページでも、検索エンジンやユーザーに見つけてもらえず、信頼も得られなければ、成長にはほとんどつながりません。そこでGlotEOは、翻訳と多言語SEOを組み合わせています。クロール可能なURL、相互のhreflang指定、そして前述の技術的な基盤を、別のプロジェクトではなく、同じワークフローの一部として整えます。

言語や対象市場を自社のURL構造にどう反映すべきかも検討しているなら、国際SEOと多言語SEOの違いで、その判断について詳しく解説しています。また、言語版の公開にかかる費用や期間を知りたい方は、GlotEOの料金とプランで選択肢をご確認ください。

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